特別アピール  〜「女人禁制」による就労差別を告発する 〜

   トンネル工事「見学・勉強会」で入坑拒否!

 はじめまして、練馬ユニオン様。私はKと申します。現在、東京のA市に住んでいます。
数年前の『過去』の話なのですが、いまだに納得できず、『トラウマ』になってしまってい
ることなのです。相談に乗っていただけませんでしょうか? よろしくお願い致します。
 私は3年前まで、土木技術者としてB地方の中堅規模の建設会社で働いていました。
4年前のある日、県内では大手の某建設会社の『トンネル工事見学及び勉強会』という
ことで現場に行くことになりました。(しかし、同行している上司の方々の様子がおかしい
のが、気になりました。)
 そして、現場に着いたのですが、現場のトンネル工事の出入り口で、上司からこう言
い渡されました。「申し訳ないが、女性は技術職でも入れるわけにはいかない。現場の
会社の責任者からそう言われている。わかってほしい」と・・・。
 私は、驚いてしまい、「どうして、“女だから入るな”なんて、そんな失礼なことを、他人
から言われなければならないのですか? 信じられません!納得いきません!」と言いまし
た。もう既に、周りの雰囲気が「女性の入所を拒否する空気」で立ちこめており、抗議
を諦め、承諾しました。
 その現場を持たれている建設会社の責任者の方からも「わかってほしい。とにかく、
地元の土木作業員の人たちは現場に来る途中に犬に出会っただけで家に引き返して
しまうぐらいの人たちで・・・。女人禁制のシキタリを信じているので、仕方ないのです。」
と言われました。
 そして・・・数日後・・・私は、同期の男性社員から、私が「女人禁制に抗議した行動」を
さんざん扱き下ろされました。「女人禁制は守らなければいけない慣習だ。地元の人の
精神状態、信心を理解してあげられないのか? 自分は、大学の文化財学科でちゃんと
学んでいるから・・・。あんただって、『初詣』に行くだろう? それと女人禁制はまったく
変わらない慣習だ・・・」

 私は、目が点になってしまいました。『地元の人の心』は考えても『慣習を押し付けられ、
傷つけられた私の心』に関しては、まったく触れてくれません。


 ちなみに、その同期男性社員からは、毎日インケンなことを言われ、いわゆる、職場イ
ジメをされていましたし、セクハラ発言も3回ほどされています。

 「どうしてキミは俺達にお茶をくまないの?」、作業服がちょっと乱れていただけで、「女
の子のくせに」と・・・
しかし、うちの課の上司である部長や、経営者である社長も、「女は女、男は男」という考
えの方だったので、申告しても、話にならないと思い、諦めて、当時は特に対処しません
でした・・・。と言いますか・・・当時、精神的にも肉体的にも疲れてしまい、何も対処する
気にはなれませんでした・・・。(略)

   「女人禁制」は強制される!

 しばらくして、ネットで検索してみたら、『女人禁制は、神社参りと同じ』『女人禁制は、伝
統的な慣習』、こういう発言をする人が多いことがわかりました。
 彼の様な考えの人間は日本に多く存在するのです。私は、その会社を辞めた後、東京
に戻り、少々、女人禁制について調べてみたり、考えてみたりしたのですが・・・
 まず、“女人禁制、これが、「神社参り、初詣と同じ」”だなんて、とんでもない考えだと思
います。
少し考えればわかることですが、「神社参り」や「初詣」には、“第三者に対して、強制力な
んてまったくない”のです。
行きたくない人は別に行きませんし、行きたい人は行く、個人の自由であって、「強制され
る」ことなど、当然ありません。女人禁制のように、「参拝者が選ばれる」、「一部の人間が
参拝を拒否される」、などの、差別される要素さえありません。それと比較すると、“女人
禁制は、その場で「100%、強制される」”のです。
一体どう考えれば、「初詣と女人禁制は同じ」などという考えが出てくるのでしょうか? (略)

   「偏見・人権侵害だ」と何故指導しないのか ?

 腑に落ちなかった私は、行政が設けている「法務局の『人権擁護課』」に相談しました。
しかし、彼らからは、「むずかしいんだよね〜」「なんともいえないんだよね〜」「貴方の言
っていることは正しい。でも、どうにもならない」という返事しか聞けませんでした。
要するに、『女人禁制は慣習のため、セクハラにさえならない』ということらしいのです・・・ !
 最近、『ハンセン氏病元患者の、ホテル宿泊拒否』の件が、人権侵害ということで、大変
問題になりました。そして、法務局のHPを見たら、「ハンセン氏病元患者、及びハンセン
氏病に対して、偏見をなくそう」というHPが作られていました。しかし『女人禁制は、偏見・
人権侵害です。やめましょう。』というHPありません。
 「ハンセン氏病に関しては、サイトを作り、啓発しているのに、どうして女人禁制に関して
は1ページも作れないのか? せめて、各建設会社に“女人禁制は偏見である”というパン
フレット1枚でも、配ってもらえないのか? 女性技術職の権利はどうでもいいのか?」・・・
こういったことも、人権擁護課に抗議したのですが、「あなたの気持ちはわかるが、どうに
もならない」と言われて、終わってしまいました。 (略)

   これでは進むわけがない ! 女性技術職の進出 !

 女人禁制と言った慣習が「伝統」と言われているようでは、山間部土木工事の女性技術
職進出など進むわけがありません。法務局はどう思っているのでしょうか? 男女共同参
画とやらは一体どうなっているのかと思う時があります。 (略)
 これが、“勉強会であった”ということを法務局人権課に申告すると、とたんに、「貴方の
担当の仕事と言うわけではなかったのでしょう? 貴方は損をしているわけではない」と言
われ、ますますとりあってくれなかったのです。しかし・・・「勉強会」とはいえ、会社の教育
の一環でありましたし、女性ということで、肝心のトンネル内を見学させてもらえなかった
こと、トンネルの出入り口に取り残され、男性社員たちの姿がトンネルの中に消えていく
のを見て、“大変惨めで、不愉快な気持ちを味わった”ことには変わりはないのです。

(大学時代、大学教授から、「土木の世界には、もう女人禁制など存在しない」と、笑いな
がら言われていたのに、それが実際は存在したということで、大変ショックでもありまし
た。)
 それに、そんな慣習が残されているということは、その大手企業側でも、女性に山間工
事を担当させていない状況が容易にわかります。だいたい慣習というものは、その地域一
体で行われているはずですので、その現場1件だけの問題でもないと思われます。

   「慣習は規制できない」という均等室の人権侵害 !

 雇用機会均等法にも触れる行為で、『国・県側の指導不足』と思えるのですが、均等室
は「現在、労働法中に、“慣習”に関する事項が無いため答えられません。在ったら答えら
れるのですが...この問題は、どちらかというと、人権問題になると思うのですが...」とはぐら
かしてきました。私は、「ですから、この件に関して、法務局の人権相談課にも何回か相談
したのですが、“わからない”と言われ終わってしまったのですよ。これでは堂々巡りになっ
てしまいますよ」と抗議せざるをえませんでした。 (略)

 私は、「女性だから入るな」といわれた時点で、大変屈辱的な思いをしましたし、心を犯さ
れたような気分になりました。女性として、汚された気分にもなりました。どうして、国は、女
人禁制に関しては“しり込み状態”なのでしょうか? 建設業界の力が強いからでしょうか?

私一人がカンカンに怒っていても、何もならな。それが情けないです。

   男性も、女性も、自身の問題として考えてください !

 女人禁制と聞くと、「女性だけの問題であって男性の我々には関係無い」と、思われる方
が多いようなのですが、もう少し自分の身と置き換えて考えていただきたいです。
 もし、あなたが「男性だから、この仕事はさせられない・教育訓練をうけさせられない」と、
言われた場合…当然、男性達も反発しているはずなのです。巷で中傷されている“フェミ
ニストのヒステリー”なのかどうか、冷静に考えていただきたいのです。
 1つの差別的慣習を肯定する、ということは、全ての差別的慣習を肯定する、ということ
です。差別とは、女性だけに向けられているものとは限りません。出身地、遺伝性疾患、
病気、人種、部落…これらのものは差別だが、女性に関するものだけは区別である、と
いうのは誤りです。
 女性の社会的地位が極端に低かった時代の思想を現在の社会で、実施、強制すること
が正しいことなのかどうか、皆さんに冷静に考えていただきたいのです。
 女人禁制と聞くと、「女性だけの問題であって男性の我々には関係無い」と、思われる方
が多いようなのですが、もう少し自分の身と置き換えて考えていただきたいです。
 もしも、貴方が「男性だから、この仕事はさせられない、教育訓練をうけさせられない」
と、言われた場合…当然、男性達も反発しているはずなのです。巷で中傷されている“フェ
ミニストの過剰反応”なのかどうか、冷静に考えていただきたいのです。
 1つの差別的慣習を肯定するということは全ての差別的慣習を肯定する、ということです。
差別とは、女性だけに向けられているものとは限りません。出身地、遺伝性疾患、病気、
人種、部落…これらのものは「差別」だが、女性に関するものだけは「区別」である、という
のは誤りです。
 そして、男性の方々のみではなく、女性の方々にも申し上げたいのですが、「女性を差別
する慣習」であるのにもかかわらず、日本では、「女性達の半分近くが女人禁制の慣習に
賛成している」ということをよく耳にします。それは大変残念なことと思います。たぶん、「男
は男、女は女」という思想が私達の中に染み付いてしまっているのが原因だと思われます
が…

   「人権を無視しても変えてはならない」というルールは無いはずです !

 古代日本では神事は女性が司っていました。しかし、その後、封建時代に男性中心の社
会になった事や、宗教理念などの理由から、女は月経があるということで「不浄の性」と締
め出されました。(それ以外にも女人禁制の慣習が出来上がった理由は幾つかあるのでし
ょうが、全て根拠の無いものです。)
“大切な出産準備のための現象”が『不浄』とこじつけられ、それが元で現代まで差別的慣
習が存続されてしまっていること、それによって、女性が参入し難い業界が存在している、
男性と同等の扱いをしてもらえない。これらの現状を、女性として理不尽には感じません
?
  「医学が未発達の時代に生きたご先祖様達が言った事だから仕方ない。元々、慣習と
は根拠の無いものであるから」で、済まされることでしょうか?

 数々のスポーツ競技、医学、酒造、登山、社寺、歌舞伎座の舞台…様々な分野・場所が
女人禁制、もしくは、男性のみの分野であったことをご存知でしょうか? それらは全て、そ
の分野を切り開いた先駆者の女性達が存在したからこそ、現在は当然のことのように女
性達が各業界で活躍できるようになりました。
 もしも、差別的慣習を『伝統』として肯定されている女性の方々がこの意見を読まれまし
たら、「私は女性があまり参入していない新たな分野を開拓しようとも思わないし、男性並
みに社会に出て働きたいと思わないから」ではなく、同じ女性として、過去と将来の先駆者
の女性達を応援する意味でも、「伝統とは何なのか? 文化とは何なのか?」もう一度、考
直していただけませんか?
 伝統とは、当時の文化・思想を反映し、時代の変遷とともに変化して引き継がれてきたも
のです。現代の私達には、伝統・文化を守る事だけではなく、新たな伝統・文化を作り、次
に引き継ぐこともできるのです。「人権を無視してでも不変のものとしなければならない」と
いうルールは無いはずです。時代とともに変わるもの、変えなければならないものもあるでしょう。

 女性の社会的地位が極端に低かった封建時代の思想を、現在の社会で実施・強制する
ことが正しい事なのかどうか…改めて、皆さんに冷静に考えていただきたいです。



《注》

※Kさんの告発は広範囲に渡り、多くの問題について示唆に富んだ提起をされていますが、
紙面の関係で、一部抜粋して掲載しました。(文責は編集部にあります)

※『女性差別撤廃条約』「女性に対する差別となる既存の法律、規則、慣習および慣行を
修正し又は廃止すること」を締約国の義務とし、『改正男女雇用機会均等法・指針』は「教
育訓練に当たって、女性であることを理由として、その対象から女性労働者を排除するこ
と」を禁止しています。

                  (練馬ユニオン機関紙『ゆにおん』44号より)

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