ユニオンからのメッセージB

食糧を求める人々が長蛇の列を作り、飢えや疫病で次々と人が死に、道には身ぐるみ
剥がれた死体が転がる。1980年代に書かれたアメリカの小説『最後の物たちの国で』
(ポール・オースター)の舞台だ。
支配者の無策が重なり、自壊へと向かう国に足を踏み入れたのは、若い女性。行方不明
になった兄を探しての旅だった。彼女はここに来てすぐに全財産を奪われ、路上生活を余
儀なくされる。ごみ拾いでわずかばかりの収入を得、ひもじさと闘っている時、一人の年
老いた女性と出会い、共同生活を始める。
孤独から解放され、夜露を凌げる家を手に入れたのも束の間、共同生活者の夫に陵辱さ
れ、ズタズタに心を引き裂かれる。どん底の日々をやりすごし町をさまよう中で、心から
分かり合える男性と巡り会い、子供を授かったものの不幸な事故で流産。
飢え、疲れ、寒さ、恐怖に覆い尽くされたアナーキーな国で、過酷な運命に翻弄され、
探し求める兄の手がかりさえ見つからず、生きる気力を失いかけた彼女が、最後に辿り着
いたのは一軒の屋敷だった。そこでは、生きるか死ぬかの瀬戸際に立つ最貧の人々に、無
償で食糧と住処を提供していた。厳しくなる一方の状況にあっても、決して投げ出さず最
善を尽くす人、悲しみの中でもユーモアを失わずに生きる人と接するうち、彼女も、与え
られた状況の中で精いっぱい、前向きに生きていこうと思うようになる。
世界中の「悲惨」を寄せ集めたような設定の小説だが、読み終わった時、不思議と勇気
が湧いてきた。どんなに厳しい状況の中にも必ず救いはある、人との触れ合いを通して希
望の光は見えてくる、と教えてくれたからだ。
いわれなき解雇で人格まで否定され明日を見失った人、セクハラで心に深い傷を負った
人など、多くの人々から、練馬ユニオンに相談が寄せられている。
自分自身、2年半前、転職したばかりの職場から解雇を言い渡された時は、目の前が真
っ暗になり、次の一歩を踏み出す元気を失ってしまった。要領良く仕事を覚えることがで
きずクビになってしまった、と自分を責め、きちんとした人生設計も持たず安易に生きて
きたことのツケが今回ってきたんだ、とこれまでの生き方に自信を失い、この先仕事も見
つからず路頭に迷う羽目になるのでは、と不安に苛まれ、眠れぬ日々が続いた。そんな時
支えてくれたのは、励まし、一緒に闘ってくれたユニオンの仲間だった。会社との交渉の
中で、自分に非があて解雇されたのではないことを認めさせ、新しい道を歩み出す力を取
り戻すことができた。
苦境の真っ只中に立たされている多くの仲間よ、どうか、一人で悩みを抱え込まず、気
持ちを受け止め、支える仲間がいること、苦しみにも必ず終わりがあることを信じ、力を
合わせて闘ってゆきましょう。
(R)